光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第20回 光環

・・・・・ 光の回折による発色現象 ・・・・・

前回は光の屈折による発色現象として虹のお話をしました。今回は、虹と一見よく似てはいますが、虹とは全く発生原理の異なる、「光環(こうかん) ※1 」と呼ばれる現象についてお話します。太陽や月の周りにうっすらと一見虹によく似たぼやけた環が見えることがあります。薄い雲や霧がかかった時に見られることが多いのですが、これは光環と呼ばれる気象現象です。また、夜にほろ酔い加減で帰宅途中に公園などにさしかかると、公園の照明光源の周りに虹のような環が見えることがあります。酔っ払っているせいで見える訳ではありません。これも光環です。光環の色の現れ方は、円形の最も外側の赤から最も内側の紫へと連続的に変化しています。虹は光の屈折現象によって発生しますが、光環は、光の回折現象によって発生します。

波の回折現象

直射日光を受けた人の影が路上にクッキリと投射される場面などから、多くの人が光は直進する、というイメージを持っているのではないでしょうか。それはその通りで巨視的には間違いではないのですが、微視的に細かく調べてみると、光の進行途上に障害物があるような場合には、必ずしも厳密に直進しているわけではありません。

本連載の第 2 回でお話しましたように、光は電磁波の内の 1 種であり、他の電磁波と同様に、波の性質と粒子の性質を併せ持っています。回折現象はこの内、波の性質に起因して観察される現象で、波の進行する行く手に障害物が存在すると、その障害物の背後にまで波が回りこむ現象のことを指してします。例えば、沖から磯の岩礁に打ち寄せる波は、岩礁の反対側まで回り込んでいるのが観察されますね。この回折現象の起こり方は波の波長によって変化し、波長が長いほど回り込み方が顕著になります。

右図は池やプールなどに設けられた穴の開いた隔壁に向かって波(平面波)が寄せてくる場合のイメージ図です。隔壁の穴を通って波が向こう側へ伝播して行くのですが、波の波長( λ )が長いほど( λ 2λ 1 )回り込み方が顕著であることを示しています。水面の波は眼でも明らかにわかる長い波長ですので、波の回り込みも明瞭に観察されます。また、眼には見えませんが、ラジオやテレビの放送に使われる電波は、非常に長い波長であるため、障害物の後ろまで容易に回り込みます。家の中でもラジオが聴けるのは、放送局からの電波が回折現象によって家の中の隅々まで届くためです。光の波長は電波に比べて極めて短いため、水面の波や電波のような顕著な回折現象は起こりませんが、それでも電磁「波」であるため、詳しく調べると僅かながら回折現象が発生することが確認できます。

大気中の浮遊微粒子による回折

人間の眼では直接にはなかなかわかりませんが、大気中には多くの微粒子が浮遊しています。これらの微粒子に光が当たると、その光が微粒子によって回折されます。1 個の微粒子に着目して、回折の様子を拡大してイメージしてみましょう。光源(太陽)から来た光が微粒子に到達すると、ある波長の成分について、右上図のような回折の仕方をすると考えられます。光源からの光が白色光である場合には様々な波長成分が含まれていますので、それらの波長毎に回折光の進行方向(角度)が変わることになります。つまり、光源と微粒子を結ぶ直線を光軸として、その光軸周りに、波長毎に頂角の異なる円錐状にこのような回折光が、軸対称に発生している訳です。

光環の見える原理

この回折された光を人間が観察する様子を、長波長光(赤)、中波長光(緑)、短波長光(青)に分けてそれぞれ模式的に描いてみたのが右図 ( a ) ~ ( e ) です。ただし、分かりやすくするために、微粒子は縦一列に並んだ状態で描いてあります。

( a )

一番上に描いた微粒子での回折光は光源からの光の進行方向を光軸として微粒子を頂点とする円錐状に進行し、円錐の頂角は長波長光(赤)が最も大きく、短波長光(青)が最も小さくなります。これらの回折光の内、観察者との位置関係から長波長光(赤)のみが観察者の眼に入射します。

( b )

上から 2 番目に描いた微粒子でも全く同様な回折が起こりますが、観察者との位置関係から、この場合は中波長光(緑)のみが観察者の眼に入射します。

( c )

同様に、上から 3 番目に描いた微粒子からの回折光では、短波長光(青)のみが観察者の眼に入射します。

( d )

光源からの光が白色光である場合には、これらの現象が全微粒子で同時に発生しており、それぞれの微粒子からの異なる波長の回折光成分が同時に観察者の眼に入射してくることになります。

( e )

つまり、観察者側から見れば、眼から光源への方向を光軸とし、眼を頂点とする様々な頂角の円錐群の稜線毎に波長の異なる光が入射してくることになります。その結果、光源(太陽)を中心にして、外側が長波長光(赤)、まん中が中波長光(緑)、内側が短波長光(青)の、同心円状の一見虹のような縞模様が見えることになります。

薄い雲や霧がかかったような天候のときに光環が見えることが多いのは、大気中に浮遊する微粒子(細かい水滴群)が多く、回折現象が顕著化するためです。また、杉花粉の飛散季節にも、花粉が太陽光を回折することによって、光環がよく見られるようです。

光環が観察される条件

上記の説明からわかりますように、光環が観察される場合の、光源と観察者と回折原因(浮遊微粒子)との位置関係は、必ず次のようになっています。観察者は光源(太陽や月など)に正対しており、両者の間の空間に微粒子群が浮遊しているという位置関係です。その結果として、光源を中心として同心円状に光環が観察されます。

一方、前回に説明しました虹は、一見光環とよく似た七色の(半)円形の縞模様に見えますが、光源と観察者と浮遊粒子(水滴)群との位置関係は全く異なります。すなわち虹の場合は、光源(太陽)は必ず観察者の背後から射しており、観察者の前方にある水滴群で太陽光が屈折・分光された結果として観察されます。

光環の大きさ(径)と色の分離

上述のように光環は空中に浮遊する微粒子による光の回折現象が原因で発生するのですが、回折の角度は光の波長と微粒子の大きさの相対関係で決まります。上記の回折現象の説明では、障壁の穴の大きさ(粒子の大きさに相当する)に対して波長が長いほど回り込み易い、という説明をしましたが、或る波長に着目して考えれば、障壁の穴(粒子の大きさ)が小さいほど、回りこみ易いということになります。従って、浮遊粒子が小さいほど回折角が大きくなるため、光環の径は大きくなります。実際には、視半径で 2 ~ 3° の大きさで発生することが多いようです。

また、浮遊粒子群の大きさが揃っているほど、色が明確に分離した美しい光環になり、粒子群の大きさのばらつきが多い場合には、同じ波長に対する回折角のバラツキが大きくなるため、色の分離があまり明確でないぼんやりとした光環になってしまいます。

注釈

※1 光環

「光環(こうかん)」は、「光冠(こうかん)」あるいは「コロナ corona 」と表現される場合もあります。

光環
・・・・・ 光の回折による発色現象 ・・・・・

光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第20回 光環

・・・・・ 光の回折による発色現象 ・・・・・

前回は光の屈折による発色現象として虹のお話をしました。今回は、虹と一見よく似てはいますが、虹とは全く発生原理の異なる、「光環(こうかん) ※1 」と呼ばれる現象についてお話します。太陽や月の周りにうっすらと一見虹によく似たぼやけた環が見えることがあります。薄い雲や霧がかかった時に見られることが多いのですが、これは光環と呼ばれる気象現象です。また、夜にほろ酔い加減で帰宅途中に公園などにさしかかると、公園の照明光源の周りに虹のような環が見えることがあります。酔っ払っているせいで見える訳ではありません。これも光環です。光環の色の現れ方は、円形の最も外側の赤から最も内側の紫へと連続的に変化しています。虹は光の屈折現象によって発生しますが、光環は、光の回折現象によって発生します。

波の回折現象

直射日光を受けた人の影が路上にクッキリと投射される場面などから、多くの人が光は直進する、というイメージを持っているのではないでしょうか。それはその通りで巨視的には間違いではないのですが、微視的に細かく調べてみると、光の進行途上に障害物があるような場合には、必ずしも厳密に直進しているわけではありません。

本連載の第 2 回でお話しましたように、光は電磁波の内の 1 種であり、他の電磁波と同様に、波の性質と粒子の性質を併せ持っています。回折現象はこの内、波の性質に起因して観察される現象で、波の進行する行く手に障害物が存在すると、その障害物の背後にまで波が回りこむ現象のことを指してします。例えば、沖から磯の岩礁に打ち寄せる波は、岩礁の反対側まで回り込んでいるのが観察されますね。この回折現象の起こり方は波の波長によって変化し、波長が長いほど回り込み方が顕著になります。

右図は池やプールなどに設けられた穴の開いた隔壁に向かって波(平面波)が寄せてくる場合のイメージ図です。隔壁の穴を通って波が向こう側へ伝播して行くのですが、波の波長( λ )が長いほど( λ 2λ 1 )回り込み方が顕著であることを示しています。水面の波は眼でも明らかにわかる長い波長ですので、波の回り込みも明瞭に観察されます。また、眼には見えませんが、ラジオやテレビの放送に使われる電波は、非常に長い波長であるため、障害物の後ろまで容易に回り込みます。家の中でもラジオが聴けるのは、放送局からの電波が回折現象によって家の中の隅々まで届くためです。光の波長は電波に比べて極めて短いため、水面の波や電波のような顕著な回折現象は起こりませんが、それでも電磁「波」であるため、詳しく調べると僅かながら回折現象が発生することが確認できます。

大気中の浮遊微粒子による回折

人間の眼では直接にはなかなかわかりませんが、大気中には多くの微粒子が浮遊しています。これらの微粒子に光が当たると、その光が微粒子によって回折されます。1 個の微粒子に着目して、回折の様子を拡大してイメージしてみましょう。光源(太陽)から来た光が微粒子に到達すると、ある波長の成分について、右上図のような回折の仕方をすると考えられます。光源からの光が白色光である場合には様々な波長成分が含まれていますので、それらの波長毎に回折光の進行方向(角度)が変わることになります。つまり、光源と微粒子を結ぶ直線を光軸として、その光軸周りに、波長毎に頂角の異なる円錐状にこのような回折光が、軸対称に発生している訳です。

光環の見える原理

この回折された光を人間が観察する様子を、長波長光(赤)、中波長光(緑)、短波長光(青)に分けてそれぞれ模式的に描いてみたのが右図 ( a ) ~ ( e ) です。ただし、分かりやすくするために、微粒子は縦一列に並んだ状態で描いてあります。

( a )

一番上に描いた微粒子での回折光は光源からの光の進行方向を光軸として微粒子を頂点とする円錐状に進行し、円錐の頂角は長波長光(赤)が最も大きく、短波長光(青)が最も小さくなります。これらの回折光の内、観察者との位置関係から長波長光(赤)のみが観察者の眼に入射します。

( b )

上から 2 番目に描いた微粒子でも全く同様な回折が起こりますが、観察者との位置関係から、この場合は中波長光(緑)のみが観察者の眼に入射します。

( c )

同様に、上から 3 番目に描いた微粒子からの回折光では、短波長光(青)のみが観察者の眼に入射します。

( d )

光源からの光が白色光である場合には、これらの現象が全微粒子で同時に発生しており、それぞれの微粒子からの異なる波長の回折光成分が同時に観察者の眼に入射してくることになります。

( e )

つまり、観察者側から見れば、眼から光源への方向を光軸とし、眼を頂点とする様々な頂角の円錐群の稜線毎に波長の異なる光が入射してくることになります。その結果、光源(太陽)を中心にして、外側が長波長光(赤)、まん中が中波長光(緑)、内側が短波長光(青)の、同心円状の一見虹のような縞模様が見えることになります。

薄い雲や霧がかかったような天候のときに光環が見えることが多いのは、大気中に浮遊する微粒子(細かい水滴群)が多く、回折現象が顕著化するためです。また、杉花粉の飛散季節にも、花粉が太陽光を回折することによって、光環がよく見られるようです。

光環が観察される条件

上記の説明からわかりますように、光環が観察される場合の、光源と観察者と回折原因(浮遊微粒子)との位置関係は、必ず次のようになっています。観察者は光源(太陽や月など)に正対しており、両者の間の空間に微粒子群が浮遊しているという位置関係です。その結果として、光源を中心として同心円状に光環が観察されます。

一方、前回に説明しました虹は、一見光環とよく似た七色の(半)円形の縞模様に見えますが、光源と観察者と浮遊粒子(水滴)群との位置関係は全く異なります。すなわち虹の場合は、光源(太陽)は必ず観察者の背後から射しており、観察者の前方にある水滴群で太陽光が屈折・分光された結果として観察されます。

光環の大きさ(径)と色の分離

上述のように光環は空中に浮遊する微粒子による光の回折現象が原因で発生するのですが、回折の角度は光の波長と微粒子の大きさの相対関係で決まります。上記の回折現象の説明では、障壁の穴の大きさ(粒子の大きさに相当する)に対して波長が長いほど回り込み易い、という説明をしましたが、或る波長に着目して考えれば、障壁の穴(粒子の大きさ)が小さいほど、回りこみ易いということになります。従って、浮遊粒子が小さいほど回折角が大きくなるため、光環の径は大きくなります。実際には、視半径で 2 ~ 3° の大きさで発生することが多いようです。

また、浮遊粒子群の大きさが揃っているほど、色が明確に分離した美しい光環になり、粒子群の大きさのばらつきが多い場合には、同じ波長に対する回折角のバラツキが大きくなるため、色の分離があまり明確でないぼんやりとした光環になってしまいます。

注釈

※1 光環

「光環(こうかん)」は、「光冠(こうかん)」あるいは「コロナ corona 」と表現される場合もあります。

光環
・・・・・ 光の回折による発色現象 ・・・・・

光と色の話 第一部

光と色の話 第一部

第20回 光環

・・・・・ 光の回折による発色現象 ・・・・・

前回は光の屈折による発色現象として虹のお話をしました。今回は、虹と一見よく似てはいますが、虹とは全く発生原理の異なる、「光環(こうかん) ※1 」と呼ばれる現象についてお話します。太陽や月の周りにうっすらと一見虹によく似たぼやけた環が見えることがあります。薄い雲や霧がかかった時に見られることが多いのですが、これは光環と呼ばれる気象現象です。また、夜にほろ酔い加減で帰宅途中に公園などにさしかかると、公園の照明光源の周りに虹のような環が見えることがあります。酔っ払っているせいで見える訳ではありません。これも光環です。光環の色の現れ方は、円形の最も外側の赤から最も内側の紫へと連続的に変化しています。虹は光の屈折現象によって発生しますが、光環は、光の回折現象によって発生します。

波の回折現象

直射日光を受けた人の影が路上にクッキリと投射される場面などから、多くの人が光は直進する、というイメージを持っているのではないでしょうか。それはその通りで巨視的には間違いではないのですが、微視的に細かく調べてみると、光の進行途上に障害物があるような場合には、必ずしも厳密に直進しているわけではありません。

本連載の第 2 回でお話しましたように、光は電磁波の内の 1 種であり、他の電磁波と同様に、波の性質と粒子の性質を併せ持っています。回折現象はこの内、波の性質に起因して観察される現象で、波の進行する行く手に障害物が存在すると、その障害物の背後にまで波が回りこむ現象のことを指してします。例えば、沖から磯の岩礁に打ち寄せる波は、岩礁の反対側まで回り込んでいるのが観察されますね。この回折現象の起こり方は波の波長によって変化し、波長が長いほど回り込み方が顕著になります。

右図は池やプールなどに設けられた穴の開いた隔壁に向かって波(平面波)が寄せてくる場合のイメージ図です。隔壁の穴を通って波が向こう側へ伝播して行くのですが、波の波長( λ )が長いほど( λ 2λ 1 )回り込み方が顕著であることを示しています。水面の波は眼でも明らかにわかる長い波長ですので、波の回り込みも明瞭に観察されます。また、眼には見えませんが、ラジオやテレビの放送に使われる電波は、非常に長い波長であるため、障害物の後ろまで容易に回り込みます。家の中でもラジオが聴けるのは、放送局からの電波が回折現象によって家の中の隅々まで届くためです。光の波長は電波に比べて極めて短いため、水面の波や電波のような顕著な回折現象は起こりませんが、それでも電磁「波」であるため、詳しく調べると僅かながら回折現象が発生することが確認できます。

大気中の浮遊微粒子による回折

人間の眼では直接にはなかなかわかりませんが、大気中には多くの微粒子が浮遊しています。これらの微粒子に光が当たると、その光が微粒子によって回折されます。1 個の微粒子に着目して、回折の様子を拡大してイメージしてみましょう。光源(太陽)から来た光が微粒子に到達すると、ある波長の成分について、右上図のような回折の仕方をすると考えられます。光源からの光が白色光である場合には様々な波長成分が含まれていますので、それらの波長毎に回折光の進行方向(角度)が変わることになります。つまり、光源と微粒子を結ぶ直線を光軸として、その光軸周りに、波長毎に頂角の異なる円錐状にこのような回折光が、軸対称に発生している訳です。

光環の見える原理

この回折された光を人間が観察する様子を、長波長光(赤)、中波長光(緑)、短波長光(青)に分けてそれぞれ模式的に描いてみたのが右図 ( a ) ~ ( e ) です。ただし、分かりやすくするために、微粒子は縦一列に並んだ状態で描いてあります。

( a )

一番上に描いた微粒子での回折光は光源からの光の進行方向を光軸として微粒子を頂点とする円錐状に進行し、円錐の頂角は長波長光(赤)が最も大きく、短波長光(青)が最も小さくなります。これらの回折光の内、観察者との位置関係から長波長光(赤)のみが観察者の眼に入射します。

( b )

上から 2 番目に描いた微粒子でも全く同様な回折が起こりますが、観察者との位置関係から、この場合は中波長光(緑)のみが観察者の眼に入射します。

( c )

同様に、上から 3 番目に描いた微粒子からの回折光では、短波長光(青)のみが観察者の眼に入射します。

( d )

光源からの光が白色光である場合には、これらの現象が全微粒子で同時に発生しており、それぞれの微粒子からの異なる波長の回折光成分が同時に観察者の眼に入射してくることになります。

( e )

つまり、観察者側から見れば、眼から光源への方向を光軸とし、眼を頂点とする様々な頂角の円錐群の稜線毎に波長の異なる光が入射してくることになります。その結果、光源(太陽)を中心にして、外側が長波長光(赤)、まん中が中波長光(緑)、内側が短波長光(青)の、同心円状の一見虹のような縞模様が見えることになります。

薄い雲や霧がかかったような天候のときに光環が見えることが多いのは、大気中に浮遊する微粒子(細かい水滴群)が多く、回折現象が顕著化するためです。また、杉花粉の飛散季節にも、花粉が太陽光を回折することによって、光環がよく見られるようです。

光環が観察される条件

上記の説明からわかりますように、光環が観察される場合の、光源と観察者と回折原因(浮遊微粒子)との位置関係は、必ず次のようになっています。観察者は光源(太陽や月など)に正対しており、両者の間の空間に微粒子群が浮遊しているという位置関係です。その結果として、光源を中心として同心円状に光環が観察されます。

一方、前回に説明しました虹は、一見光環とよく似た七色の(半)円形の縞模様に見えますが、光源と観察者と浮遊粒子(水滴)群との位置関係は全く異なります。すなわち虹の場合は、光源(太陽)は必ず観察者の背後から射しており、観察者の前方にある水滴群で太陽光が屈折・分光された結果として観察されます。

光環の大きさ(径)と色の分離

上述のように光環は空中に浮遊する微粒子による光の回折現象が原因で発生するのですが、回折の角度は光の波長と微粒子の大きさの相対関係で決まります。上記の回折現象の説明では、障壁の穴の大きさ(粒子の大きさに相当する)に対して波長が長いほど回り込み易い、という説明をしましたが、或る波長に着目して考えれば、障壁の穴(粒子の大きさ)が小さいほど、回りこみ易いということになります。従って、浮遊粒子が小さいほど回折角が大きくなるため、光環の径は大きくなります。実際には、視半径で 2 ~ 3° の大きさで発生することが多いようです。

また、浮遊粒子群の大きさが揃っているほど、色が明確に分離した美しい光環になり、粒子群の大きさのばらつきが多い場合には、同じ波長に対する回折角のバラツキが大きくなるため、色の分離があまり明確でないぼんやりとした光環になってしまいます。

注釈

※1 光環

「光環(こうかん)」は、「光冠(こうかん)」あるいは「コロナ corona 」と表現される場合もあります。

光環
・・・・・ 光の回折による発色現象 ・・・・・

Q1.参考になりましたか?
Q2.次回連載を期待されますか?

アンケートにご協力いただきありがとうございました。